原状回復の名の下に

東京都渋谷区千駄ヶ谷にある築48年の鉄筋コンクリート造のマンションの2室を賃貸オフィスへとリノベーションした。
長い間空室となっていたその部屋は、入居者が変わるたびに行われたであろう原状回復工事により、天井や壁は幾重にもツギハギがなされ、床は歪み、配線や配管はぐちゃぐちゃになっていた。原状回復の名の下に、限られた予算の中でマイナスをゼロにすることが目的となり、戻るべき原状を見失っているように見えた。
このプロジェクトで行ったことは、天井や壁の解体・補修、床の仕上、設備の更新、配線・配管の整理等々の、これまで行われてきた工事の回復のみと言っていい。
解体と補修と整理、といったささやかな、それでいて創造的な回復を施すことで、マイナスからプラスに転じる新しい原状回復のあり方を目指した。